HiPro問題パーソルで“大株主”に君臨──一般財団法人しのはら(篠原欣子)記念財団を徹底解説。「創業者一族の持株」と異なるのか?

パーソルホールディングス(2181)の大株主一覧には、「一般財団法人 篠原欣子記念財団」の名が並ぶ。保有比率は7.04%(2025年3月31日現在)。創業者本人の篠原欣子氏による11.74%と合わせれば、パーソルグループに対する株主としての影響力は絶大だ。

財団は奨学金や助成を掲げる公益的な組織だが、株主としての議決権行使という“もう一つの顔”も持つ。本稿では財団の沿革・体制・活動の事実関係を整理し、後半でHiPro問題における株主責任とガバナンスの論点を提起する。主要数値と組織情報は公式ソースに基づく。

なお、パーソルホールディングスの株主構成については、下記記事にて詳細に解説している。

また、パーソル創業者(正確には、旧テンプスタッフ創業者)の篠原欣子氏については下記記事で解説している。

パーソルホールディングスの株主構成や、篠原氏の人物像についての一般論は上記2記事を参照してください。

本記事では、そんな篠原氏一族が管理する財団を、パーソル株主としての側面から解説する。

しのはら(篠原欣子)記念財団の基礎データ

しのはら記念財団の公式HPは下記となる。

  • 正式名称:一般財団法人 篠原欣子記念財団(通称:しのはら財団)
  • 設立:2014年2月28日(設立10周年を公表)
  • 所在地:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー6階
  • ミッション「人々の可能性や幸せ=Well-being の最大化」。AI/テクノロジーを活用した新しい形の社会貢献を標榜。
  • 主な事業:留学・資格取得向け給付型奨学金、社会福祉施設等への助成、近年はオンライン学習プラットフォーム「はたサポ! NEXT」も展開。

1-1 役員体制(最新公表)

  • 代表理事(理事長):篠原よしみ
  • 業務執行理事:古市克典(副理事長)、小泉忠(専務理事)
  • 理事:小山眞智子/星山幸子/村長真治/小俣淳子/ハーディきよか/村上由美子
  • 監事:金子尽久/淺尾兼平

なお、2025年7月に公表された役員名簿は下記となる。

代表理事の篠原よしみ氏は、パーソル米国法人の立ち上げ・成長に関わった経歴を自ら紹介している。

篠原よしみ氏と篠原欣子氏の関係──公開情報では確認できず

なお、本稿を執筆するにあたり、代表理事の篠原よしみ氏と、設立者である篠原欣子氏との具体的な関係について公開情報を調査した。

すぐに想像されるのは、篠原よしみ氏が篠原欣子氏の子供である可能性である。

しかし、親子・姉妹・親戚といった血縁関係を示す一次情報は見当たらなかった。篠原よしみ氏は、下記記事にて、「留学費用を自分で稼ぎ、海外で学んだ」という過去を明かしている。

当財団設立者の篠原欣子は、1969年当時、新卒初任給が3万円、ヨーロッパまでの往復航空券が46万円の頃、ヨーロッパ留学に挑戦。スイス、英国に留学してビジネス英語やビジネスマナーを学び帰国しました。

しかし日本で働き出すと、もっとネイティブな英語をもっと学びたい、もう一度外国に出たい という気持ちが強くなり、オーストラリアに渡航して就業。そこでは女性のマネージャーがイキイキと活躍していました。男女が分け隔てなく働くのは当時の欧米社会では当たり前でしたが、大きな衝撃を受けます。そしてその就業先で “人材派遣”という働き方を知りました。

帰国後、オーストラリアで知った人材派遣を思い出し、人材派遣会社のテンプスタッフ㈱※を1973年に創業。資本金100万円、六本木のワンルーム8坪からスタートした会社は、2006年には上場を果たし、会社は大きく発展いたしました。

※現 パーソルホールディングス㈱&パーソルテンプスタッフ㈱(以下、パーソル)
パーソルホールディングス㈱:東証プライム2181/T、売上1兆224億円 2023年3月期

代表理事 篠原よしみ
一方、当財団代表理事である私、篠原よしみは、1986年当時、日本円が1ドル240円の頃、学費および生活費250万円を自分で稼ぎ、アメリカの大学に留学しました。

大学卒業後、現パーソル(当時のテンプスタッフ㈱)の米国法人をカリフォルニア州にゼロから立ち上げ、テクノロジー業界に特化した人材紹介サービスを提供いたしました。また、複数のM&Aやテクノロジースタートアップ企業への投資や創立を経て、事業の成長・拡大に努めて参りました。

さらに人材ビジネスのデジタル化やAI化の推進に力を注ぐ中、2022年にはハーバード大学経営大学院(以下、HBS)にてデジタル・データ・デザイン研究所(以下、D^3*)を共同設立し、世界のAIトランスフォーメーションの研究やリーダーシップの育成にも貢献をしております。
また、HBSの学生アントレプレナー向けのイノベーションラボ(以下、iLabs**)のアドバイザーも務めることによって、学生企業家の推進・支援を行っております。

両氏の経歴を見るに、篠原よしみ氏も篠原欣子氏と同様、留学を経て一代で大きな功績を残し、公益事業に尽力するに至った経緯ともとれる。

しかし一方で、

  • 「篠原欣子」の名が冠される財団で、よしみ氏が理事を行なっており、いずれも苗字が「篠原」
  • よしみ氏がパーソル米国法人の立ち上げに関わった経歴を持ち、創業者との近接性をうかがわせること

などから、両氏が極めて近しい関係にあることは間違いない

しかし、それが娘なのか、親戚なのかといった血縁関係については、公的に明記されていない

この点がもし「非開示」であるならば、公益財団における透明性・独立性の観点から、検証が必要だと考えられる。もし、両氏の関係を把握している方がいたら、弊社のお問い合わせ窓口より、出典とともにご教示いただければ幸いである。

パーソルにおける「大株主」としての立ち位置

パーソルの株主構成については、下記を出典としながら整理する。

  • 主要株主構成(2025/3/31時点)
    • 日本マスタートラスト信託(信託口)14.54%
    • 篠原欣子 11.74%
    • カストディ銀行(信託口)7.14%
    • 篠原欣子記念財団 7.04%
      (パーソル公式IR「Major Shareholders」より)パーソルグループ

つまり、創業者本人(11.74%)+創業者系財団(7.04%)=合計18.78%相当。受託者名義の信託口を除いた“実質的な影響力”という観点では、創業者グループの議決権は依然として強い構図に見える

3-1 公益活動としての顔

福祉・教育分野への奨学金・助成は長年の柱。2024年以降は海外留学支援を強化し、Well-beingを掲げる再定義を公表している。

3-2 ガバナンス主体としての顔

一般財団法人は独立の法人格を持ち、理事会によって意思決定される。ゆえに“創業家の資産そのもの”とは法的には異なる

しかし、持ち株比率の7.04%という大株主ポジションを占める以上、単なる寄付・奨学金団体ではなく「議決権を持つガバナンス主体」としての役割が問われる。とりわけ、役員の独立性利害関係取引の透明性をどのように担保しているのかは、市場から見て最大の焦点となる。

言い換えれば、「公益」という看板は、株主責任からの免罪符ではないということだ。

HiPro問題と「株主としての責任」

HiPro問題(事業運営・広報対応・内部統制等の論点が指摘されてきた件)において、7.04%を握る大株主=財団は、少なくとも次の3点説明責任/監督責任を果たせる(=果たすべき)立場にある。

HiPro問題において、社内調査や広報対応が“沈黙”に終始している点は、多くのステークホルダーから疑念を持たれてきた。

ここで注目すべきは、7.04%を保有する財団の沈黙である。もし財団が「公益財団」を名乗るのであれば、次のような行動が求められるはずだ。

  • ガバナンス原則の公表:「どのような議案に賛成/反対するか」というスチュワードシップ方針を開示すること。
  • 利害関係管理の開示:創業者との関係や理事構成について、独立性をどの程度確保できているかを説明すること。
  • 株主としての是正要求:内部統制や広報の不全に対して、建設的な改善提案を議決権や株主提案という形で行うこと。

もし財団がこれらを怠るならば、実態は「創業者一族の議決権を分散保有するだけの器」に過ぎない。公益活動の美名の裏で、株式保有を正当化するための装置に矮小化されてしまう危険がある。

パーソルの未来をリードするステークホルダーは、しのはら財団か、合同会社インクルーシブソリューションズか

本稿では、一般財団法人 篠原欣子記念財団を「パーソルホールディングスの大株主」という視点から解説した。公益財団としての顔と、大株主としての責任。その両立は、決して看板だけで済まされるものではない。

  • 公益活動:奨学金や福祉助成を通じて社会貢献を掲げる。
  • 大株主の責任:7.04%の議決権を持つ以上、HiPro問題のようなガバナンス不全が指摘される局面では、沈黙を続けること自体がメッセージとなる。

ここで対照的なのが、私たち合同会社インクルーシブソリューションズの立場である。弊社は2025年、少数株主ではあるがパーソルホールディングスの株式を取得し、株主の一員となった。

私たちの株主活動は、営利追求よりも公益性を優先する姿勢に立脚している。具体的には:

  • 透明性の要求:内部統制や広報の不全があれば、改善を求める声をあげる。
  • 建設的な対話:単なる批判にとどまらず、システム改善や情報公開の具体案を提示する。
  • 独立性の確保:外部ネットワークと連携しつつ、特定の派閥や創業家支配に依存しない株主行動を貫く。

篠原記念財団は「創業家の持株と変わらない存在」なのだろうか。それともこの先、「公益的株主」としての責任を果たすのか。この問いは、今後のパーソルのガバナンスを問う重要論点である。
他方、私たちインクルーシブソリューションズは、“公益性重視”の株主として行動を開始した。HiPro問題は、すべての株主に「社会に対する説明責任とは何か」という問いを突き付けている。

あわせて読みたい参考リンク

HiPro問題とは?Hipro問題の定義

HiPro問題は、2025年1月より発足した、関西にある某化学系メーカのIT系プロジェクトで生じた炎上トラブルを皮切りに、パーソルキャリア・パーソルグループの大規模かつ組織的なコンプライアンス違反・ガバナンス不全の惨状が明るみになったスキャンダルを指します。

プロジェクトの前半で生じた炎上事案については下記記事を参考にしてください。

合同会社インクルーシブソリューションズが行う、パーソルのガバナンス改革活動の実績について

2025年6月24日に開催されたパーソルホールディングスの株主総会に先んじて、下記の問題提起を行い、社会的議論の的となりました。

また、パーソルグループ全体のIRについても公正なリスク評価が可能となるよう、啓発活動を行っています。

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