日本経済新聞はHiPro問題を報道しないのか──報道の自由、報じない責任に揺れるマスメディアの倫理

パーソルキャリアが展開する「HiPro Tech」事業をめぐる一連の問題──いわゆる「HiPro問題」は、今や一部の業務委託者のトラブルにとどまらず、人材業界全体の構造的な歪みを象徴する問題として注目されつつある。
しかし、日本の経済報道の中核を担う日本経済新聞は、まだ本件を報道していない。またそもそも、合同会社インクルーシブソリューションズに取材の打診すらきていない。

日経が報じないことは、先々単なるニュースメディアの取捨選択というよりも、「メディアの倫理」を問う問題になりかねない。

HiPro問題とはなにか

HiPro問題とは、

パーソルキャリアが提供するサービス「HiPro Tech」が仲介を担った、2025年1月より発足した某化学メーカのシステム開発プロジェクトで浮上した、パーソルキャリアの組織的コンプライアンス違反・ガバナンス不全に関する疑惑・問題の総称

を指す。

本件は、2025年3月29日以降、合同会社インクルーシブソリューションズによって、大々的にネットで・公開で継続的に告発されてきた。下記の記事が、最初のスクープである。

また、2025年4月13日には、パーソルホールディングスのIRリスクとして、合同会社インクルーシブソリューションズが日本初のスクープを報じた。それが下記記事である。

こうしたジャーナリズムが合同会社インクルーシブソリューションズには展開できるのに、他のメディアは追随できないのはなぜだろうか。各社の報道ポリシーはどうなっているのであろうか。

日本経済新聞とは

日本経済新聞は、言わずと知れば日本最大の経済メディアだ。経団連や大企業とのパイプが強く、企業情報・業界情報を報じる力に定評がある。

日経とパーソルの関係

日経は比較的企業寄りの立ち位置で報道をすることも多く、パーソルの企業情報についても多数の報道を行なっている。

また、パーソルの広報・プロモーション活動も、業界情報の一部として、日経は好意的に取り上げているケースは多い。

パーソルにとっても日経は大きな存在とみられる

こうして、日経にプロモーション・記者発表を取り上げてもらえることは、パーソル側にとっても光栄なことなのだろう。

下記のインタビュー記事では、doda事業本部/タレントシェアリング事業部/HiPro_Biz統括部/東日本コンサルティング第4部/マネジャーの山口 康介氏が、日経に取り上げてもらえることもあるという話を、HiProの仕事のやりがいとして語っている。

このように、日経とパーソルの間には、一定の協力関係もあるとみられる。これは想像の域を出ないが、おそらくパーソルは人材サービス事業者として、多数の広告をメディアに掲載している。もしかしたら、パーソルは日経にも多数の広告を掲載しているのかもしれない。このようにして、パーソルは広告料を支払い、日経は自社のもつ報道リソースを用いてパーソルの宣伝をするという相互扶助があるのかもしれない。

では、なぜ日経はHiPro問題を報じない?

理由はいくつか考えられる。

  • 企業寄りのメディアであるがゆえに、市民目線でのスクープに弱い
  • 人材業界全体に及ぶスキャンダルになることを恐れている

しかし、今はHiPro問題は、「ググれば普通に出てくる」情報だ。

日経が本件に注目しない理由は不明である。

そもそも、日経はパーソルに批判的な報道をできるのだろうか

パーソルが本格的な不祥事を起こした際、日経は批判的なジャーナリズムを本当に展開できるか否かも気になるところだ。

たとえば、下記は、パーソルキャリアのDoDaが四年連続で情報漏洩を起こした際、日本経済新聞と、そのグループ会社たる日経BPの日経クロステックが報じた記事だ。

これらの記事を見る限り、「範囲が限定的だった」というパーソル側の言い分をそのまま報じるのみだ。ジャーナリズムとしての深掘りに乏しいという印象が拭えないのではないだろうか。

パーソルが地方創生・産学連携などのテーマで大規模なプロモーションを行う際、日経はよく詳細に報じている。パーソルの責任者らが高らかに記者発表する様子を報じる際の姿勢とは対照的にも思える。

四年連続の事故ともなれば、システムを正しく管理することも、データを安全に管理することも、パーソルにはできないのではないかとさえ思える。しかし日経の報道は、根本原因がなにで、是正のために何に取り組むべきかの深掘りが薄い。マスコミはもっと核心に迫る報道を行なってもらいたいものだ。現状、見出しの「範囲が限定的だった」との心情表明のセリフがあまりにも虚しい。

なお、合同会社インクルーシブソリューションズも、DoDaの情報漏洩事故についての考察を下記記事にて展開している。

読者には日経の記事と読み比べていただき、報道姿勢の違いを吟味していただきたい。合同会社インクルーシブソリューションズが考えるマスメディアの社会的役割は、こうした専門的な知見に基づく洞察を提供することだ。ジャーナリズムという取り組み自体も「データを用いて社会課題を解決する」という点において、エンジニアの仕事の一部だと弊社は位置付けている。一般的なデータエンジニアの職域と異なっていようとも、これは情報流通の健全性を維持する活動であり、広義のデータマネジメントの実務と捉えておかしくないはずだ。

パーソルも日本経済新聞の記者の方々も、ぜひ上記記事についてのご意見・ご感想をお寄せいただければ幸いである。

問われる「報道しない自由」──日経の倫理と役割

「報道しない自由」という言葉がある。メディアには当然、編集権と取材方針を決定する自由があり、すべての出来事を等しく報じる義務があるわけではない。だが、報じないことによって何が起こるのか──その“責任”までを意識しているメディアは、果たしてどれほどあるだろうか。

HiPro問題は、単なる一企業の労務トラブルではない。多重委託構造のブラックボックス化、法的責任の所在の曖昧さ、名乗らない法務担当によるコミュニケーションの不在など、現代の人材ビジネスに内在するリスクが次々と浮かび上がっていることは、日経の記者にも理解できないはずはない。


もしこの問題が十分に検証されず、報道の網の目からこぼれ落ちれば、業界の構造的な腐敗は見過ごされたまま温存される。
その影響を受けるのは、現場で働く数万のフリーランスや業務委託者たちだ。


が人的資本経営やダイバーシティ推進などのテーマでパーソルにスポットライトを当ててきた日経。しかし「PRとしての報道」には熱心であっても、企業の負の側面には向き合わないとすれば、メディアとしての信頼性が問われるのではないか。この状況が長く続くことは、「HiPro問題ではパーソルだけでなく、日経もパーソルと一緒になって”沈黙”した」という疑惑をも生じさせる。

経済成長や新しいビジネスの成功事例を紹介するのはもちろん重要だ。しかし、企業が社会的責任を果たさず、制度や契約の隙間を利用しているとすれば、それを批判的に検証し、公正な視点で報じることもまた、メディアの重要な役割である。

今日、HiPro問題で問われているのは、パーソル内部だけでなく、報道機関をも巻き込んだ人材業界全体での自浄作用の有無である。人材業界の透明性を維持するにあたり、日経は報道機関としての社会的責任は果たさなくてはならない。

もし本稿に何か感じるところがあれば──日経新聞の記者の方々、ぜひ一度、弊社にも取材にいらしてください。現場の声と、沈黙の中に埋もれた事実をご案内します。

弊社──合同会社インクルーシブソリューションズについて

合同会社インクルーシブソリューションズは、データ・システムの力で、透明性・公共性・倫理を兼ね備えた組織運営を支援しています。

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