先日、パーソルキャリアが「五島列島の課題をプロ人材が解決する」プロジェクトの活動報告を華やかに公開した。現地にプロフェッショナル人材を派遣し、事業者の課題を解決する——その取り組み自体を否定するつもりはない。地域の魅力に触れ、外部の視点での経営提案がなされることは、多くの中小事業者にとって価値ある機会だったはずだ。
しかし一方で、どうしても感じずにはいられない違和感がある。
「自社のコンプライアンス・ガバナンス上の不信を放置しながら、地方創生といった社会課題には立派に答える姿勢」は、果たして一貫した社会的態度といえるのだろうか。
弊社が3月末より公開している一連の検証記事では、パーソルキャリアのIT人材仲介事業「HiPro Tech」の統括部門において、
- 顧問弁護士の名義を用いたメール
- エージェントとしての説明責任の放棄
- 事実確認の回避
- そして音信不通状態に陥った一連の経緯
を、ログ付きで公開している。
これに対し、パーソルキャリア側からはこれまで一切の説明も反論も、公式の対応も示されていない。
にもかかわらず、同社が「地域課題に取り組むソーシャルグッドな企業」としてメディア発信を続けていることには、少なからぬ倫理的ギャップがある。
「説明責任」はCSR・IRの基本要件である
企業が社会的信用を維持し、持続可能な成長を目指すうえで、「説明責任(Accountability)」はCSR(企業の社会的責任)やIR(投資家向け広報)の基本的要件である。
とりわけESG経営の潮流においては、ガバナンス分野での透明性の欠如は、企業価値に直結するリスクとされている。
今回パーソルキャリアが見せたような、自社サービスにまつわるコンプライアンス問題を放置したまま、美談主導で社会的貢献を語る態度は、IR・CSRどちらの文脈においても著しく整合性を欠く。
社会課題に向き合う企業こそ、まず自らの組織における説明責任を果たすべきであり、それを怠った状態で放たれるポジティブな物語は、──まるで火災現場であがる打ち上げ花火のように──むしろ更なるブランド毀損の火種ではないだろうか。
「地方のヒーロー」を演じたがる”東京の大企業様”の欺瞞
本件において、もう一つ気になるのは、「プロ人材」「課題解決」「地域支援」というキーワードが、まるで絵本のように並べられた文章構成である。
地方の小規模事業者を舞台に「奮闘する大企業とプロ人材」の物語を演出するスタイルは、受け手にとっては感動的に映るかもしれない。しかし、当事者の文脈ではどうだろうか。
そこに「大企業はフリーランス・個人に仕事を与える側である」「東京は地方を導く側である」といった構図を見透かされれば、それは無意識でも驕りと見られかねない。
日本の首都:東京も、いまでもなくひとつの”地域”である。したがって、パーソルキャリアが本当に社会課題を扱うつもりならば、まず自らが関与する業務プロセスにおける不正や説明不足を見つめ直すことこそ、最初に解決すべき“地域課題”ではないか。
パーソルは、地方=助けられる側、フリーランス=使われる側といった驕りを棄てよ
ここで弊社のSEO実績を紹介したい。
2025年4月27日現在、
- 「パーソルキャリア コンプライアンス」
- 「パーソル 内部統制」
- 「パーソルキャリア CSR」
- 「HiPro Tech トラブル」
などと検索すると、いずれも、弊社が運営する広報サイトのページがGoogleで上位にランクインしている。「パーソルキャリア 違法」と検索した場合は、1位,2位,3位すべてが弊社が作成した告発コンテンツとなる。
言うまでもないが、弊社合同会社インクルーシブソリューションズは、パーソルのグループ会社でもなければ、パーソルの監査人でもない。ただの一人社長の合同会社にすぎない弊社になぜ、ここまでのことが成し得たのだろうか。
その答えは、検索エンジンの仕組みが「良い話」よりも「具体的な事実」を求めることにある。崇高な理念を語る企業より、社会問題を証拠つきで開示する個人が上位にくることは、アルゴリズムの仕組みを理解すれば当然だ。パーソルのコンプラに興味をもってGoogle検索をする人は、「パーソルが一人で唱えているだけの”法令遵守のお題目”が読みたい」のではない。「パーソルがもしコンプラ違反をしているなら、それについて知りたい」人なのである。
対してパーソルキャリアは、「まるごと五島列島を考える」「副業で社会課題を解決する」といった“美談”ばかりを性懲りもなく並べ続けている。当たり前だが、社会課題を語る前に、自社がやってきたことの説明が先である。
皮肉にも弊社が検索結果に並べているのは「主観ではなく記録」「一個人のクレームではなく、構造的な問題提起」「感情論ではなく社会評論」だ。パーソルキャリアがいくら美辞麗句と空虚な理念を羅列したとて、検索ニーズには刺さらない。
年商1000億円、社員7000人超の規模であっても、「読み手の具体的な興味関心に応える」という一点により、パーソルキャリアは社員1名の合同会社に”検索結果で敗北”したのだ。これがWebマーケティング・SEOの世界なのである。
いまパーソルキャリアが置かれている立場は、地方や個人を「支援する側」ではない。「自らに突きつけられた疑惑を払拭しなければならない側」である。「マッチングしてあげる」「支援してあげる」と言わんばかりの”上から目線の”姿勢で仲介業務を続けるなら、それは”組織の外の世界”を見失った担当者の「内輪なお披露目式の開陳」でしかない。厳しい言い方をすると、組織まるごと自惚れているだけである。
理念偏重・具体性なし・読者の知りたいことに答えない、そんな広報姿勢では、Web広報でのパーソルの敗勢は今後も広がる一方だろう。それがわからないなら、パーソルキャリアはマーケティングの実力以前に、まず危機感が足りていないという評価が妥当だろう。
本当に語るべきテーマは他のところにある。リスクマネジメントの機能不全、各種「宣言」の形骸化にどう対処するのか?
仕事の話においてなによりも大事なのは、いうまでもなく「具体的な実務」の話だ。理想論や美辞麗句が、誰かの困りごとを取り除いてくれるわけではないし、お金を稼いできてくれるわけでもない。いかに責任を全うし、価値を生み、対価を正当化し、持続可能なビジネスモデルへと昇華させていくつもりなのか、彼らは果たして自分の言葉で語れるのだろうか。
具体的な指摘事項としては、3線に基づくリスクマネジメントが機能していたらHiPro問題など起きていなかったはずだろうという指摘に、彼らは回答すべきなのだ。
また、「法律を守ります」という勇ましい宣言だけをネットに飾った手前、「実務は全くそのとおりになっていないですよね」とネットで指摘されると黙りこんでしまう状況に、多少なりとも危機感はあるのだろうか。危機感があっても、どう動けばよいかがわからない状況なのだろうか。それで組織経営ができるのだろうか。
HiPro問題に興味をもった読者の皆様には、ぜひパーソルキャリアに問い合わせてみていただきたい。弊社は、「匿名のコンタクトセンター」以外では、お返事を頂戴できたためしがないが、誰がお問合せしても同じであるかどうかまでは、弊社も把握していない。
パーソルキャリアは「五島列島の課題」は解決できても、「自社のガバナンス不全」は解決できないのか?
いつまでも沈黙しかできないパーソルキャリアに、今回もあらためて質問だけしておく。パーソルキャリアは、五島列島の”田舎の”地方創生問題には情熱をもって立ち向かい、アクションプランの策定までやってあげるのに、自社のコンプライアンス違反・広報の崩壊・ガバナンス不全といった内部統制問題には何も語れないのか?
この非対称な広報姿勢を、多くのステークホルダーが冷静に見ている。
そもそも地方は、都会人が休日に遊びに行く“空気の綺麗な場所”ではない。あらゆる地域には——都会も地方も関係なく——そこで働き、そこで暮らす、労働者・生活者が実在している。
また、フリーランスは、知恵も交渉力も持たない都合のいい“外注職人”ではない。リスクと責任を引き受けながら自立的に活動する経済主体である。ここにも企業も個人も、大手も中小も関係はない。
企業がいかに立派なことを語っても、自社の行動と整合しない限り、社会的信用はついてこない。いつまでもそれが分からないなら、そろそろ社内の志のある人材から、内部で改革の声があがるのを期待するしかないだろう。
2025年5月14日追記
この文章を公開してから半月が経過した。この間、パーソルキャリアからは当然ながら何の反論も説明もなかった。だが、それ以上に興味深かったのは、同社の“広報文化”が今なお一貫していることだ。最新の発信を見ても、「産学連携」「はたらくことの価値」「若者のキャリア開発」──いずれも社会貢献の物語を前面に出した”いい話””イメージ先行型”の発信を続けているように見える。
東京都立大学とHiPro Directの産学連携(5月2日)
森田咲氏と石上篤史氏の執行役員就任挨拶と、「働くことの価値」(5月9日)
doda編集長 桜井貴史氏による、「若者のキャリア意識」の考察(5月14日)
- dodaはキャリア意識の高い若者に選ばれている
- 転職は成長
- 市場価値に目覚めた若者が選んでいる
といったイメージを読者に残すこと、ひいては、パーソルキャリアが提供するサービスの無謬性をPRすることが狙いとみられる。
「あなた方のやっているビジネスは違法ですよ」とネットで晒されてるときに、やるべき”広報”って本当にこれか?否定しないで大丈夫か?
責任者レベルでの組織的不正を、こうしてネットで全世界に向けて大規模に告発され、すでに東京弁護士会に通報までなされているにもかかわらず、である。
このような状況で、パーソルキャリアの親会社たるパーソルホールディングスが、2025年6月の株主総会でなにを語るのだろうか。
株主総会の招集通知の記載には、HiPro問題の話は書かれていないが、「経営的に大して重要な問題ではない。パーソルの働く人々のストーリーのほうが大事だ」といったスタンスであろうか。
まとめ:パーソルは「はたらいて、笑っている」場合ではない。あらゆる仕事=実務には、”責任”があることを自覚すべきだ
まるで「自社の疑惑」に触れず、「世の中の困りごと」にだけに向き合っていれば、クリーンな企業イメージが保てるとでも信じているかのようだ。だがそれは、火事を起こした本人が、消火活動そっちのけで「防火対策の講習会」を企画しているようなものだ。
「自社が抱えるコンプライアンス違反の疑惑に回答する」ことすらできないのに、「善いことだけを語る」パーソルの広報は、具体的な実務に真剣に向き合う──それこそ誠実に”はたらく”姿勢に欠けているのではないだろうか。
サービスの受け手や業界関係者、ひいては社会全体、また仲介業者としての具体的な”実務そのもの”と真剣に向き合う姿勢が持てないなら、どれほど美辞麗句を並べたところで、広報の言葉は受け手には届かない。
データがビジネスの主戦場となる今日、企業の広報活動においても、言論空間で主導権争いは熾烈だ。同社の「はたらいて、笑おう」の標語も、この期に及んでは気楽で無責任な職業観を示すかのようで、ただただ虚しい。
パーソルキャリアが健全な倫理と責任感を取り戻し、中身の伴った言葉で、ふたたび「働く喜び」を社会に発信できる日は、まだまだ先になるのかもしれない。
参考リンク一覧
以下に、HiPro問題をもっと知りたい人にむけた参考サイトを紹介します。
パーソル公式情報
パーソルキャリア公式
パーソルグループ公式
HiPro公式
HiPro問題公式
パーソル側の法務・弁護士の中枢メンバーについて
監査役・米国弁護士の林大介氏について
パーソルホールディングス執行役員・CLO、弁護士(第二東京弁護士会所属)の菅奈穂氏について
パーソルホールディングス戦略法務室室長、弁護士(第二東京弁護士会所属)の原美緒氏について
その他、外部有識者となる弁護士について(顧問弁護士の所在不明のため)
岡田淳氏(森・濱田松本法律事務所 弁護士)、森亮二氏(弁護士法人英知法律事務所 弁護士)などが、外部有識者として名を連ねています。
HiPro問題関係者について
野村鉄平氏(HiPro Tech責任者)について
鏑木陽二朗氏について
大里真一朗(HiPro Direct責任者)について
HiPro Directは地方創生の文脈でパーソルが執拗に名前をだすブランド名であり、そうした不自然なパーソルの広報姿勢自体が疑惑を一層深刻なものとしています。下記記事では、そうした背景をHiPro Directの責任者の人物像とともに解説しています。
吉岡荘太氏(HiPro Biz責任者)について
その他、パーソル側経営メンバーについて
パーソル広報部について
ソーシャルメディアの活用を中心とした、パーソルの広報活動については下記記事にて随時更新しています。
パーソルの広報活動において、指揮をとるのは、パーソルホールディングスのコミュニケーション本部長の村澤典知氏です。
パーソルの地方創生問題について
五島列島に限らないパーソルの地方創生をめぐる全般的問題については、下記記事にて随時更新しています。









