突然だが、手元のパソコン・スマホで、「パーソルキャリア 顧問弁護士」とGoogle検索してみてほしい。
2025年7月13日時点で──というか、もう何ヶ月も前から、おそらくこの先も──、こんなふうに告発記事が上位を占拠する状況だ。

これは、パーソルキャリアの名乗らない匿名のカスタマーセンター・コンタクトセンターが、「弁護士を出す(からいうことをきけ)」というハッタリに基づく恫喝を行い、その後HiPro Tech統括責任者の野村鉄平氏が失踪するという衝撃的なスキャンダル──通称HiPro問題の告発が、大きな注目を集めたためだ。
また加えて、パーソルグループが顧問弁護士の実在を明かせない状況が皮肉にもGoogleによって可視化された結果でもある。
パーソルには顧問弁護士がいないのでは?という疑惑が業界に広まる状況だが、調べると、「外部有識者」なる弁護士事務所が複数あることがわかる。
そこで本記事では、この外部有識者なるパーソル周辺の弁護士について解説する。また加えて、彼らがHiPro問題とどのような関係をもつと推測されるかについても、考察する。
「パーソルキャリア 顧問弁護士」の検索結果にあらわれる疑惑の根深さ
まず冒頭にあげた検索結果のスクリーンショットだが、1位、2位、3位、5位が、パーソルグループの弁護士関係の企業不正の告発記事だ。
検索結果に現れる記事(1位から)
一位から順番にリンクを紹介する。
このように、パーソルキャリアの法務体制・弁護士との連携体制についてネット検索すると、ほぼ告発ばかりになっている。本来、コンプライアンスを維持し、企業の評判・風評を健全に保つことが弁護士をはじめとする有識者の役割ではないのだろうか。
この検索結果は、パーソルの弁護士がパーソルの評判・風評の維持に協力できているのかを強く疑わせる事態とみるべきである。
こうしたパーソルの評判管理の課題については、CSR(企業の社会的責任)の観点からは、下記記事で詳しく論じている。
上の記事では、さまざまな検索ワードで告発記事が白日のもとに晒され続ける状況で、パーソルが疑惑に沈黙を続けることの異常性を論じている。
AI要約にも「顧問弁護士は誰なのかわからない」と認定される有様
パーソルキャリアの顧問弁護士について、具体的な名前や事務所の情報は公開されていません。しかし、パーソルキャリアは法務部門を強化しており、グループ全体で法務・コンプライアンス体制を整備しています。また、社外の弁護士をセミナー講師として招き、労務問題に関する情報提供を行うなど、外部の専門家とも連携しています。
パーソルキャリアの顧問弁護士に関する情報は、一般的に公開されていません。しかし、パーソルキャリアは法務部門を強化しており、グループ全体で法務・コンプライアンス体制を整備しています。
具体的には、以下の点が挙げられます。
法務室の設置:
パーソルホールディングスには法務室が設置されており、グループ全体の法務戦略やリスク管理を担っています。
法務部長の存在:
パーソルホールディングスの法務室長は、グループ全体の戦略法務案件やガバナンスを担当しています。
執行役員CLO/CROの設置:
パーソルホールディングスには、Chief Legal Officer (CLO) / Chief Risk Officer (CRO) の役職が設けられ、法務とリスク管理を統括しています。
外部弁護士との連携:
パーソルキャリアは、外部の弁護士をセミナー講師として招き、労務問題に関する情報提供を行っています。
これらのことから、パーソルキャリアは、グループ全体の法務体制を整備し、外部の専門家とも連携しながら、コンプライアンスを重視した事業運営を行っていると考えられます。
もし、特定の弁護士との関係や、顧問弁護士に関する詳細な情報が必要な場合は、パーソルキャリアの広報部などにお問い合わせいただくのが確実です。

パーソルの外部有識者とやらは、この状況で何をしているのか
「HiproTechカスタマーセンター」を名乗る”匿名”の人物が、合同会社インクルーシブソリューションズ宛に送った、「弁護士をだす(からいうことを聞け)という恫喝メールの一部抜粋は下記となる(2025年4月2日 19:03)。
安部 航祐様
HiPro Tech カスタマーセンターございます。
本日弊社従業員およびお客様宛にお送りされたメールに対しこちらから返信いたします。
今後は弊社従業員およびお客様へのご連絡はお控えください。
なお、今後弊社にご連絡いただく場合は、代理人弁護士から回答差し上げますので、あらかじめご認識ください。
この後、代理人弁護士はあらわれないまま数ヶ月経過した。「顧問弁護士の情報は非公開」とAIに認定までされている状況だが、”一応”公開されている”外部有識者”はこの状況で何をしているのだろうか。
以下に、外部有識者として紹介される弁護士についての情報を整理する。
なお、弁護士情報の調査には、以下の日弁連のデータベースを使用する。
(※1)なお、以下に紹介する弁護士およびその所属事務所については、HiPro問題を含むパーソルグループのコンプライアンス上の具体的責任を追及する意図は一切ありません。本稿では、パーソルキャリアから送付された「代理人弁護士が対応する」とする匿名のメール案内に基づき、パーソルが公表している外部有識者情報の中から、HiPro問題との関係性が僅かでも生じうると判断された弁護士および所属事務所を取り上げています。
岡田淳氏(森・濱田松本法律事務所 弁護士)
| 氏名かな | おかだ あつし | ||
|---|---|---|---|
| 氏名 | 岡田 淳 | ||
| 登録番号 | 29890 | 会員区分 | 弁護士 |
| 弁護士会 | 第二東京 | 性別 | 男性 |
| 事務所名 | 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 | ||
|---|---|---|---|
| 住所 | 〒100-8222 東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内パークビルディング | ||
| 電話番号 | 03-5220-1821 | FAX番号 | 03-5220-1721 |
森亮二氏(弁護士法人英知法律事務所 弁護士)
| 氏名かな | もり りょうじ | ||
|---|---|---|---|
| 氏名 | 森 亮二 | ||
| 登録番号 | 25458 | 会員区分 | 弁護士 |
| 弁護士会 | 第一東京 | 性別 | 男性 |
| 事務所名 | 弁護士法人英知法律事務所 | ||
|---|---|---|---|
| 住所 | 〒105-0001 東京都港区虎ノ門5-13-1 虎ノ門40MTビル9階 | ||
| 電話番号 | 03-5425-2561 | FAX番号 | 03-5425-2563 |
山本龍彦氏(慶應義塾大学大学院法務研究科 教授)
山本氏は、公開されているプロフィールを見るに、大学での法学研究者としての紹介が多い。また、公開情報には弁護士であるとの記載は見当たらなかった。したがって、山本氏は、弁護士ではなく、法学者という位置付けでの外部有識者だと見られる。
しかし、下記のように、松田綜合法律事務所のページでの紹介もあり、法律実務の領域での活動も行なっている模様である。
その他の外部有識者
崎村 夏彦氏(NATコンサルティング合同会社 代表)、沢田 登志子氏(一般社団法人ECネットワーク 理事)の2名は、弁護士および法曹関係者とは異なるとみられる。
外部有識者以外にも、パーソル関係者の弁護士は業界に多数
また、外部有識者という立場に限らず、パーソルの事業活動にさまざまなかたちで関与する弁護士は大勢いる。
パナソニックコネクトCLO 玉田豊氏
たとえばパナソニックコネクトで現在CLOとなり、DEIを推進する玉田豊氏も起業法務のスペシャリストとして、パーソルホールディングスCGDOの喜多恭子氏とDEIの対談企画を過去に行なっている。
DEIはDiversity、Equity、Inclusion の頭文字を合わせた標語で、先進的な企業理念として注目されている。しかし弁護士不在のパーソルはいま、他社のCLOと崇高な理念で対談を行なっている場合ではないだろう。はやくHiPro問題という事件に対応できる弁護士を確保しなければならないはずだ。
法律事務所アルシエン 河野冬樹氏
ほかにも、フリーランス法務のプロフェッショナルである河野冬樹弁護士なども、パーソル関係者の一人である。河野氏はHiProサービス本体の支援を行なっている。しかしこれもまた、法務メディアとしての「一般的な法律論」のみの「監修」にとどまっており、個別具体の事件対応には関与できていない。
これだけの有識者を揃えながら、HiPro問題は防げず、かつ”沈黙”しかできず、対応ができないのか?
こうして有識者の名前を挙げてみると、その全てがビジネスおよび学術の第一線で活躍する方々ばかりである。もちろん、「こうした有識者たちの怠慢が、HiPro問題の原因だ」などと軽率に決めつけてはならない。
しかし、現に数多くの弁護士がパーソルと”関係”自体はもつにもかかわらず、これらの弁護士が誰一人として実際の法的紛争には対応できずにいる状況があるのは事実だ。したがって、専門知識が実際に活かせる場面で彼らを起用できずにいるのが、パーソルの現在の法務体制なのだといえる。
このような「巨大なガバナンスの空洞」とでも言うべき失態はなぜ・どのようにして生じたのだろうか。以下にもう少し掘り下げてみたい。
内部統制は「建前」で終わっていなかったか?
指針やガイドライン・会議体の整備は盤石にも見えた。しかし、その運用には課題もあるように見える。
ガバナンスとは「誰が何に責任を持つのか」である
また、ガバナンス・内部統制の基本は、「誰がなにに責任をもつのかを明確にすること」「他人事だから自分は知らない」といって全員失踪する事態を生まないこと、などにある。
外部に有能な人物をたくさん揃え、それをホームページに掲載しても、内部統制が強化されるわけではない。それ自体を、外部有識者が指導すべきであるとみられるが、果たして彼らはパーソルの内部の人員の責任感・当事者意識・主体性・仕事へのオーナーシップを高めるような関わりをしてきたのだろうか。
たとえば下記記事は、パーソルのHiPro問題のプロジェクトの関係者(責任者の野村鉄平氏、担当者の東竜誠氏など)がプロジェクトの途中で”失踪”していった状況がネットで拡散されたときの記事だ。
また、東京弁護士会にもパーソルの非弁行為の疑惑はすでに通報済みだ。それにもかかわらず、パーソル側は、社内弁護士も含め全員疑惑を黙殺している。
この状況では、外部有識者から、パーソルの内部のスタッフが適切な助言・相談を受けられているかどうかも疑わしいと言わざるを得ない。
責任の所在が不明どれほど曖昧でも、最後の責任はパーソルホールディングスの和田孝雄氏が負うことになる
どれほどこうした責任の所在が曖昧で、社内・社外の役割分担が不透明な状況にあっても、企業活動において、代表取締役CEOが無責任でいることはできない。少なくとも、内部統制報告書の記載について、パーソルホールディングスの和田孝雄氏が責任を負っている。
まとめ
本稿では、パーソルグループの外部有識者として名を連ねる弁護士・専門家の実績を紹介しつつ、その存在がHiPro問題のような現場の混乱を未然に防げたのか、という点に静かに疑問を呈した。
制度や体制の整備だけでなく、それが現場にどう実装されているかこそが、コンプライアンスの真価を決める。
この問題をめぐっては、今後も検証と対話が求められるだろう。
あわせて読みたい参考リンク
パーソルグループで働く弁護士について
パーソルホールディングスで働く弁護士には、CLO(最高法務責任者)の菅奈帆氏や、戦略法務室室長の原美緒氏などがいます。
また、弁護士むけにHiPro問題を解説した記事は下記となります。
あわせて、社内・社外での弁護士での活用に課題が見受けられるパーソルですが、別のところでは弁護士採用の活動も進めていることが確認されます。下記記事では、そうした採用の動きにあわせて、新たにパーソルグループに就職される弁護士にむけた協力要請も行なっています。
HiProサービスに関して
HiProはパーソルキャリアによって運営されるサービスであり、その責任者はパーソルキャリアの執行役員である鏑木陽二郎氏です。
また、HiProサービス自体も、「外部のプロ人材の活用」をコンセプトに掲げており、この観点からも、外部有識者の知見の、内部での活用はパーソルにとって重要な課題と考えられます。






