2025年6月25日、パーソルホールディングスは、内部統制報告書を公表した。
内部統制報告書は、経営者自らが「うちは健全です」と表明する自己評価書である。内部統制書の作成は上場企業の法的義務であり、東証プライムに上場するパーソルホールディングスも例外ではない。これは外部監査と異なり会社の自己申告としての性質も強いため、もし虚偽があると市場からの信頼が大きく損なわれることにもなり、記載内容には相応の責任も伴う。
しかし現在パーソルグループ全体の内部統制への信頼は、パーソルキャリアで生じたガバナンス・コンプライアンス上の数々の疑惑──通称HiPro問題によって大きく揺らいでいる。こうした状況下において、パーソルホールディングスの内部統制報告書にはどのような記載がなされたのだろうか。そしてその内容は信頼できるだろうか?
本記事では、2025年のパーソルホールディングスの内部統制報告書の記載の妥当性・信頼性を、HiPro問題を踏まえて検証する。
内部統制の“健全性”は実在したのか?
本来、内部統制報告書は経営者が「重大な不備はなかった」と断言するものであり、社内の制度運用が適切に機能していたことを示す。だが、仮に制度が“あった”としても、それが「実際に機能していたか」は別問題だ。
たとえば、2025年現在、パーソルキャリアのHiPro Tech事業部では非弁行為(弁護士法27条、72条違反)の疑惑をはじめとして、多数のコンプライアンス違反の疑惑が噴出している。具体的には、業務委託契約を装いながら、実質的には当事者同士の法律関係の調整や報酬交渉を弁護士資格のない営業担当が日常的かつ組織的に行い、多数のHiProサービス利用者に被害をもたらしてきた疑いがある。
こうした経緯について、詳細に知りたい読者のために、下記記事で時系列つきでメールの全文を掲載している。
これで「問題なし」と言えるのか?──不当利得と売上・収益計上をめぐる会計の疑惑
下記に、2025年3月28日9時16分に、合同会社インクルーシブソリューションズから、パーソルキャリアの代表問い合わせに行った問い合わせメールの全文を掲載する。なお、本メールには、「法務ご担当者様」と明記しているが、法務からの返事は今なお来ていない。
お問い合わせ内容:
パーソルキャリア株式会社
法務ご担当者様
お世話になっております。
合同会社インクルーシブソリューションズ代表の安部と申します。
現在、貴社のHiPro Tech仲介案件に関して、重大な契約上および法的問題について、野村鉄平氏宛に問い合わせを行っておりますが、既に4日以上にわたり、貴社からのご返答は一切いただけておりません。
私は2025年3月24日、以下の指摘を含む文書を、エンドクライアントも含め関係者全体に送付しております。
【指摘の骨子(再掲)】
・貴社が介入した一連の業務には、非弁行為(弁護士法違反)の疑いがあります
・統括責任者の指示のもとで行われた組織的関与の可能性があり、刑事・民事の両面での違法性があると考えています
しかし、全証拠とともに、反論・弁明の機会を提示しているにもかかわらず、貴社はこれに対して沈黙を続けています
この状態で、万一パーソルキャリア株式会社が、
エンドクライアントに対し「本件のプロジェクトに関する報酬請求」を行う場合、
以下の懸念が生じます:
1. 契約内容に重大な違法性が指摘されているにも関わらず、反論や釈明が一切ないまま請求を行う行為は、エンドクライアントに黙認を強いることになります
2. その結果、エンドクライアントが共犯的な立場に巻き込まれかねません
3. 貴社は現在、私の指摘に反論も謝罪もしていないため、結果的に「事実関係の黙認」という構図が発生しています
上記の通り、貴社の対応によっては、
エンドクライアント自身が不正行為を黙認した構図になり、企業としての信用を大きく損なう恐れがあると考えます。
そのため、以下の点について、明確なご回答をお願いいたします。
【質問事項】
1. 上記のような刑事・民事上の問題が指摘されている状態で、エンドクライアントに対して本プロジェクトの報酬請求を行うご予定はありますか?
2. 仮に行う場合、それはどのような法的根拠および社内判断に基づくものでしょうか?
3. 本件について貴社としての正式な見解を、いつ・どのような形で公表/説明されるご予定でしょうか?
ご返信のない場合、
「重大な違法性の指摘に対し、企業としての対応を一切とらないまま、エンドクライアントに請求を行った」
という構図が成立します。
また、エンドクライアント自身に悪意がなかった場合、「パーソルキャリアは自社のコンプライアンス問題を放置しながら、何も知らないエンドクライアントを一方的に共犯関係に巻き込んでくる会社である」という見方も妥当性を帯びてきます。
この点については、今後、LinkedIn・note・弊社Webサイト等にて公開するにあたり、パーソルキャリア社のコンプライアンス姿勢を問う重要な論点になることを予めお伝えしておきます。
なお、弊社からはいままで複数回にわたり、当該代表問い合わせ(https://www.persol-career.co.jp/contact/)を行なっていますが、これについても貴社からは一度も返事をいただけたことがありません。(いつも読んでいただけたのかどうかすら把握できていません。)
今回は、まずはこの文章を「読んだ」「見た」段階にて、確認者様のお名前を明示のうえ、至急一報頂戴できますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
上記のメールでは、「パーソルキャリアの活動には組織的な違法行為への関与が疑われ、この状況でエンドクライアントに報酬を請求すれば、クライアントも共犯関係に巻き込む構図ともなりかねない。これで請求を行って大丈夫か?」という内容の質問をしている。
お問合せ先は窓口は、下記の代表窓口だ。
パーソルキャリアのHiPro問題の関係者はその後全員失踪し、音信不通となったため、本メールへの返事は、数ヶ月たった今も返ってきていない。正確には、「違法性なし」という根拠不明の結論のみを主張する、名乗らない「カスタマーセンター」「コンタクトセンター」なる不審者からのメールのみが確認できている状況だ。
しかし、本メールの送り主は名乗りもない匿名の人物のため、そもそもパーソル関係者であるかどうかも不明の状況だ。こうした不審なメールが届いた経緯は、下記記事で説明している。
しかしいずれにしても、弊社・合同会社インクルーシブソリューションズは、
- HiPro Tech統括責任者である野村鉄平氏に質問をしていた
- 前掲のメールにもあるように、法務の担当者あてにメールをしていた
という状況だった。それにもかかわらず、パーソル側の対応は、
- 名乗りのない匿名の”カスタマーセンター”を名乗る不審者による返事しかしていない
- しかもその不審な”カスタマーセンター”が「弁護士を出す」と言っておきながら、弁護士もあらわれず、そのカスタマーセンターもパーソルキャリアのタレントシェアリング事業部の人員も全員対応を放棄した
といった有様なのだ。普通に考えれば「誰も責任をもって対応できないほど組織的不正・違法行為の疑惑が濃厚であり、パーソル側の内部調査によっても違法行為の実在が内部で既に確認済みである」という可能性すら強く疑われる事態なのだ。
つまりパーソル側は、違法性を内包した契約に基づく報酬の請求が行い、それが売上・収益として計上された疑いがあるということだ。この場合、民事上の不当利得(民法703条)の適用により、クライアントへ当該プロジェクトで生じた売上の返還が必要となる可能性もある。
また、パーソルキャリア株式会社のタレントシェアリング事業部のHiPro Tech統括部がもし同種の法的紛争を別の場所でも抱えていると仮定すると、この先集団訴訟が起き、係争額が大きくなっていくことも懸念される。この場合は、会社の業績予測に影響することが先々の懸案事項となるかもしれない。
このように、パーソルキャリアで生じた一大スキャンダル・通称HiPro問題は、たんなるサービス業者としての誠実さ・評判管理といった次元に留まる問題では最早ない。HiPro問題は、パーソル側の異様な”沈黙”によって、今や開示される財務・会計データの信憑性を直接揺るがす事案と見るべきである。
もちろん、「パーソルが不正会計・決算の粉飾を行なっている」などと、ただちに断言することはできない。しかしこうして証拠付きで、しかもWebで公開で厳しく追求されるなか、パーソル側がひたすら異常な”沈黙”を続け、疑惑を払拭する努力を何もしていないことは確かであり、深刻な疑惑が存在することは事実と言わざるを得ない。
2025年のパーソルの内部統制報告書は、今年もほぼテンプレ通りで、一見すると会社として順調そうだ。しかし形式的・表層的な答弁しかできない状況こそが、皮肉にもパーソルの根源的な経営課題を象徴しているようにも見える。
早急にパーソルホールディングスはパーソルキャリアのタレントシェアリング事業部のHiPro Tech統括部ひいてはHiProブランドの全サービスの適法性を検証し、その検証結果をステークホルダーに開示すべきだろう。これは子会社を管理するホールディングスの責任のはずだ。
パーソルの内部統制には”異常はない”のだろうか?
本記事の本論は、一旦、ここまでで終わりとしたい。内部統制報告書という資料自体がわずか数ページにとどまるのが通例で、その記載も形式にとどまるのが普通だからだ。2025年のパーソルホールディングスの内部統制報告書も同じだ。
形式的に記された「問題なし」との記載にむけた疑義の具体内容もまた、論じるべきことは多くない。
しかし、興味のある読者のために、関連するテーマについて、弊社の私見をもう少しだけ述べておきたい。内部統制報告書をめぐる、パーソルおよびその他の上場企業を取り巻く全般的な課題についてだ。
内部統制報告書には”盲点”もあるのではないだろうか
内部統制報告書の作成は、たしかに法的義務であり、一定の強制力もあるのは確かだ。しかしそこで問われるのは、「財務報告の虚偽を防ぐ仕組み」が整っているかに留まり、倫理・ガバナンス・人権といった非財務リスクの評価が不十分になりがちだという課題はないだろうか。
昨今ではESGやレピュテーションリスクの高まりを受け、「制度は整っていたが運用されていなかった」ことが株価下落や社会的批判の要因になるケースも増えている。そんな中で、内部統制報告書の作成義務は、本当に各企業の企業不正の抑止力として機能しているのだろうか。定型化・形式化しがちな内部統制報告書の作成義務は、その有効性への疑問も提起させる。
内部統制の崩壊を指摘されながら、その疑惑に沈黙し、”内部統制とはなにか?”とオウンドメディアで語るパーソル──これが内部統制が健全な会社で起きることだろうか
パーソルの内部統制をめぐっては、実は現在きわめて皮肉な現実がある。文字通り”内部統制”という言葉についてだ。
そしてその皮肉は、誰もがこの場で、そのパソコン・スマートフォンを使って、この場で確認することができる。Googleを開き、「パーソルキャリア 内部統制」と検索してみよう。2025年7月6日時点で、一位として表示されるのは「パーソルキャリアの内部統制/ガバナンスの崩壊問題まとめ」という弊社の告発記事だ。あなたも是非試してみてほしい。

ちなみに、一位表示されている記事は、下記である。
パーソルキャリアの内部統制についてGoogleで調べて最初に辿り着く情報は、「パーソルキャリアの内部統制の崩壊」という告発記事なのである。
しかもこの話は、ここまでが前置きである。本当の皮肉はこの次だ。確認してほしいのは、3位として表示されたパーソルグループの公式コンテンツのほうだ。
開いてみればわかるが、普通の企業のオウンドメディアであり、会社法等のビジネス関係の法令の詳しい解説があるだけだが、問題はそこではない。見てほしいのは、この記事の最新の更新日付である。なんと、2025年6月6日であり、つい最近の記事なのだ。

ちなみにHiPro問題について、合同会社インクルーシブソリューションズの告発が最初に行われたのは、同年3月29日だ。それ以降、ガバナンス不全に対するパーソルへの批判が公開で継続されるなか、その批判への反論ができぬまま、「内部統制とはなにか?」という一般論についてWebで語っていたというわけだ。
こうした広報部の足並みの揃わなさは、パーソルの内部統制の不健全さの裏付けみるべきではないだろうか?この事実は内部統制報告書には、当然記されてもいない。
最後に、2025年の内部統制報告書の一節を一部抜粋し、引用しておく。
当社代表取締役社長CEO和田孝雄は、当事業年度の末日である2025年3月31日を基準日とし、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、当社グループの財務報告に係る内部統制の評価を実施いたしました。
パーソルの内部統制にも課題が見受けられるが、同時にここには、金融商品取引法の実効性に関し普遍的な社会課題もあらわれているように思える。法令に基づく最低限の情報開示、形式的・表層的な答弁に終始することなく、ステークホルダーが本当に関心をもつ領域に・自分の言葉で説明を試みること──これは多くの企業のIR部門が抱える課題だ。パーソルの事例は多くの人にとって他山の石ではない。
次の時代の牽引する企業は、社会との対話を重んじる企業のなかからきっと現れる。そう信じて、弊社はいまもこの記事を執筆している。
合わせて読みたい参考リンク
パーソルグループの、その他のIR資料に関して
2025年の有価証券報告書についての解説記事は、下記になります。
有価証券報告書は、内部統制報告書とセットで作成・提出される資料であり、あわせて読むことでパーソルホールディングスのIR・広報について理解を深めることができます。
また、株主総会の招集通知の記載に関しても、下記記事にて詳細な注釈解説を行なっています。
パーソルグループのIRに関して
パーソルホールディングスのIRについての全般的なまとめは、下記記事にて詳細に解説しています。
組織体制・制度批判について
「制度があっても、それが有効に機能するとは限らない」点が、パーソルホールディングスの内部統制をめぐる大きな疑義を生じさせています。この話題に関連して、リスクマネジメント体制の1線・2線・3線の機能不全の疑惑を下記記事で展開しています。
また、「行動規範」が、「宣言して終わりになっているのではないか?」という批判とともに、行動規範と実務の不整合に対する検証を下記記事では行なっています。
本記事で言及されてきたパーソル側の関係者について
パーソルキャリア株式会社のタレントシェアリング事業部の、HiPro Tech統括部の責任者の野村鉄平氏については下記記事にて詳細に解説しています。
また、HiProサービス全体の統括責任者は、パーソルキャリアで執行役員を務める鏑木陽一朗氏となります。
少なくともHiPro サービスの現場レベルでの運用ポリシーについては、野村氏・鏑木氏に説明する義務があると考えられます。
弊社──合同会社インクルーシブソリューションズについて
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